MINIと決めたら次はモデル選びだ。MINIにはMINI One、MINI Cooper、MINI Cooper Sという3モデルがある。何れも1600ccだが、Oneはいわゆるスタンダードタイプで90馬力、Cooperは116馬力にチューンアップされ装備も充実している。Cooper
Sはスーパー・チャージャー付きのホットバージョンで163馬力の高出力を誇る。OneとCooperはMT(マニュアル)とCVT(無段変速)が選べるがCooper
SはMTのみ。価格はMT同士で比べるとOneが195万、Cooperが225万、Cooper Sが260万だ。なお、OneとCooperは10万アップでCVTが買える。 さて、選択に当たってCooper
Sは初めから眼中に無かった。まずスーパー・チャージャーがいけない。機械式燃料充填なのでターボに比べアクセル・レスポンスに優れているのだが、デメリットは重くてうるさいこと。足回りも強化されているのでOneの1130Kgより50Kg、つまり常に大人一人余分に乗せて走っているようなものだ。価格も高く、重い車を速く走らせる分燃料も沢山食うわけだからSを買うのはサーキットやラリーで走りを楽しむ人か、高性能車に乗っていることを自慢したいお金持ちだけだろう。もう、しゃかりきになって飛ばす歳でもないしね。
MTかCVTかでも迷いは無かった。オートマや無断変速の楽ちんさは百も承知だが、都会の渋滞とも無縁で、茶畑の中に舗装されたワインディングロードが連なる掛川近辺では、ギアを思い通りに選択して目一杯エンジンを引っ張れるマニュアルの方が乗っていて断然楽しいのだ。CVTの発進時のもっさりした感じも好きになれないし、燃費だってMTの方が1割位は良いに決まっている。それにCVTには不信感もあった。以前代車として借りた国産のCVT車は低速でギクシャクとして乗りにくかったからだ。こういう技術にかけては世界のトップであろう国産車にしてそのレベルだから他国のは推して知るべしだ。
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セブンホール・アルミ |
OneかCooperか、それが問題だった。価格差は30万。Oneに無くてCooperにあるものと言えば、プラス26馬力、スポーツサス、屋根の別塗装、アルミホイール、フォグランプ、オンボード・コンピュータと、あとは細かい内・外装の差である。この内どうしても欲しいのはアルミホイールだけだった。スチールのホイールは被せてあるキャップが時に変形したり塗装が剥げたりするし、アルミにすればバネ下重量が軽減されてタイヤの路面に対する追従性が増し、さらに車重も4〜5Kgは軽くなるはずだから。Cooperに標準の7つ穴のアルミホイールデザインがまた良い。
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セルシオより立派なテールパイプ |
逆に、Cooperには余計な物や絶対欲しくない物が付いてくる。スポーツサスはOneのしっかりした乗り心地を硬いものに変えてしまう。マフラーカッターなど、実に肉厚で堅牢なMINIのステンレス製テールパイプを覆い隠してしまう以外何の役にも立たない。また、屋根の色をクラシックMiniのように白や黒に塗ることに今さらどんな意味があるだろう?26馬力の出力向上も調べるとエンジンの圧縮比やポート研磨や排気系のチューン等によるものではなく、単に燃料噴射のプログラムをいじったものでしかない。つまりCooperはOneと全く同じエンジンで、単にROMを換えて余分に燃料を噴射しているに過ぎないのだ。
BMWは間違いなくベーシックなMINI
One
を主眼に置いて開発に心血を注いでいる。200万を切る価格にもかかわらず、4輪ディスクブレーキ、ABS(アンチロック・ブレーキ・システム)、スタビリティ・コントロール、前後計6個のエアバッグ、タイヤ圧低下インジケーター、シートベルト・テンショナー等々走りや安全に関する手抜きは一切ない。ステアリングまで皮巻きなのには驚いた。夏に汗をよく吸収してくれるので快適だし滑らず安全だ。その代わり頻繁には使わないシートのアジャスト装置などは全て手動にしてコストと重量増を避けている。日本仕様では標準のオートエアコンも本国ではオプションと知りなるほどと納得した。あんなに気の利かないものはないからな。
これがもし国産車だったらどうだろう?日本のメーカーはきっと中級グレードに焦点を当てて開発を進めるだろう。その方が儲かるからだ。一番安いモデルでは恥ずかしいという一億総中流意識の日本人の心理に付け込み、下から2番目、或いは上から2番目の車種を売れ筋と考えて最もお買い得に仕立て上げるに違いない。だからもしベーシックモデルでも注文しようものなら、『いやお客さん、それは後輪がドラムブレーキですよ』とか『それにはエアバッグが付かないのでおやめになった方が、、、』ということになる。つまり国産車のベーシックモデルはメーカーが売りたいモデルからの引き算で出来上がっているわけだ。もっともメーカーの思う壺に見事にはまる人が多いからメーカーもその戦略を変えないのだろうが。
ベーシックモデルに乗ると、その国の国民やメーカーが何を重視し何に価値を置いているかが良く解る。厳しいコスト制約の中であらゆる要望や欲求をふるいにかけ、これだけは譲れない、絶対に必要だと思うものだけを残すからだ。卑近な例に譬えれば、初めて入るラーメン屋の味を占うのに、決してチャーシュー麺やワンタン麺や、間違っても五目ラーメンなんかを頼んではならない。一番安い素のラーメンにこそ、店主の技や哲学が凝縮されているはずである。廉価モデルだからといって決して手抜きをしないBMWの志の高さに深く共感した。
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テールランプの造形も完璧 |
というわけで、熟考の末に私が選んだのはMINI One MT。色はソリッド・カラーの中からコンパクトなクルマに良く似合うリキッド・イエローを選んだ。これはNewビートルのほど白っぽくなく、フィアット系のほど真っ黄色すぎず、上品でとても気に入った。ニューMINIのテーマ・カラーに違いないと勝手に信じている。メタリック塗装は確かに綺麗だが、塗料に含まるアルミ片が次第に酸化し退色してくるので買わない。オプションとしてはアルミホイールの他にSAABで好印象だったサンルーフを付けた。気候の良い時に開けて走るのが気持ち良いのは勿論だが、炎天下に長時間駐車した時などすぐに熱気を逃すのに役立つ。MINIのサンルーフは黒いスモークド・ガラス製なので適度な透過性があり、室内を明るく開放的にしてくれるし、膨張色であるボディカラーをきりりと引き締めてくれる。
さて、これ以上論理的で賢明な選択があるだろうか?きっと多くの人が自分と同様に考えてMINI Oneの MTを買うに違いないと思ったのだが・・・。あるクルマ雑誌によれば、そもそもMINI
Oneの比率がMINI全体の5分の1以下の18%で、MINI One MTに至ってはたったの1%!、さらにその内リキッド・イエローはわずか5%!だという。0.01×0.05=0.0005%ということは1万台に5台、つまり2千人に1人しか同じ考えの人がいないということになる。信じ難いこの現実をどう捉えればいいのか、、、、。「太陽に吠えろ」の松田優作ではないが、手のひらならぬ記事をまじまじ見つめながら『な、なんじゃこりゃー!』と叫びたくなった。 |