天竜浜名湖線
のどかな鉄道の旅



JR浜松駅に隣接している始発駅

第3セクターである天竜浜名湖鉄道株式会社が運営する天竜浜名湖線、通称「天浜線」は、掛川駅を起点として、森の石松の生地「遠州森」駅や、ヤマハの管楽器工場がある「豊岡」、天竜川上流の「天竜二俣」駅などを経由した後、浜名湖の裏(北)側にある「気賀」、「寸座」、美味しいみかんで有名な「三ケ日」、その名も「奥浜名湖」駅など、36もの駅を通って終点「新所原(しんじょはら:地元では思いっきり“しんじょっぱら”)」駅に至る変化に富んだローカル鉄道である。

電車はたったの1両だが新しくてきれい

総延長は70Km弱だが、単線のためか待ち合わせ時間が多く、始発駅から終着駅まで2時間以上要する。掛川駅も新所原駅も東海道線で繋がっているのに、なぜわざわざ山間部をぐるりと迂回する鉄道を建設したのかについては、第2次大戦中に米国艦隊の艦砲射撃から軍需物資を守るためだと聞いた事がある。何れにせよ、山あり、川あり、湖ありの起伏に富んだ風景を眺めながら、気ままに途中下車して名所旧跡などを訪ね歩くのも掛川ならではの楽しみと言えるだろう。
実はGmも特に風光明媚と言われる奥浜名湖方面までは足を延ばしたことがないのだが、先日「天竜下り」と鍾乳洞である「竜ヶ岩洞(りゅうがしどう)」へ行ってきたのでご紹介しよう。
ただ、電車は1時間に1本位しかないから、途中で降りる場合は次の電車の時間を確認しておくことをお忘れなく。

車両は新型なので車内は明るく清潔ですが、見ての通りガラガラです。マイカーをやめて電車で通勤すれば「年に100冊も本が読めます」と天浜線はPRに努めています。

発車して暫くは田んぼの中を一直線に進みます。車掌さんはいないので、運転手さんがワンマンバスのように全てをまかないます。顔なじみのお客さんとは世間話をしたりします。 平地を抜け山間部に差し掛かるとトンネルが出てきます。それでも時速70Km位出ていますが、途中駅でなぜか「ここで15分停車します」とかアナウンスがあるので意味がありません。
12番目の遠江一宮(とうとうみいちのみや)駅は無人駅ですが、駅舎の中に「百々屋(ももや)」というお蕎麦屋さんがあって、とても美味しいです。いつもお客さんが駅の待合室の椅子に腰掛けて並んでいます。

「天竜下り」は全線の中ほどにある天竜二俣(てんりゅうふたまた)駅で降り、駅前の送迎バスに乗ると2,300円で体験できます。30分ほどの行程を終えると下流の船着場からまたバスで駅まで送ってくれます。 15人ほどを乗せた船は、雄大な自然の中をゆっくりと下りますが、水しぶきを浴びることもなく平和そのもの。上流にダムが出来てからスリルがなくなったという人もいますが、泳げない僕はこれで充分満足。
船頭さんは船の前後に一人ずついて、先頭の船頭さんが左右の風景や歴史などを面白おかしく説明してくれます。ちなみに僕が乗った船の船頭さんは爆笑問題の田中君にそっくりだった。 天竜二俣から8つめの駅「金指(かなさし)」駅下車。バスで15分。東海道最大といわれる鍾乳洞「竜ヶ岩洞(りゅうがしどう)」が発見されたのは比較的新しく今から25年位前だ。入り口看板横の竜は時々煙を吐く。

2億5千万年も掛けて形成されたという竜ヶ岩洞の内部は、様々な形状の鍾乳石で覆い尽くされている。総延長は1Kmにも及ぶそうだが、一般公開されているのは400m。ひんやりとした洞内は1年中18℃に保たれる。
鍾乳石は石柱のようなものばかりかと思っていたが、これはフロー・ストーンと呼ばれるへちま型のもの。他にもカーテン・ストーンという襞(ひだ)型や、上下の太さが変わらないストロー形などがあるそうだ。 「マリア観音」とか「神の間」とか、何にでも名前を付けて有り難がるのは日本人の性なのか、中には首を傾げたくなるようなネーミングもある。写真は「黄金の富士」とのことだが僕にはどうも違う物のようにしか見えない。 途中駅で乗り換えた旧型の電車。ちょっとレトロだが、これはこれで風情があるかも。とても儲かっているとは思えない天浜線だが、「スロー・ライフ」に相応しく、地球環境にも優しいその魅力がもっと見直されてもよいと思うのだが。

(2007.09.02 by Gm)