「おもいでの家」のお好み焼きと寿司
掛川駅北口に面した県道をクルマで東に10分ほど走っていると、青地に白文字で「おもいでの家←200M」と書かれた看板が出てくる。場所柄からして民宿や怪しいホテルでもなさそうだ。 ちょっと好奇心に駆られて側道へ入り、曲がりくねった坂を上がると大きな標識が出てきた。「お好み焼き」「寿司」「こんにゃく料理」が一緒に書いてある。全部同じ店なのだろうか?
一体どんな店だろう?と覗き込むと、一見何の変哲もない農家だ。玄関には暖簾が掛かっているから店には間違いなかろう。高級料理店という風情でもなし、お好み焼きなら高くてもたかが知れている。 意を決して玄関に入ると「いらっしゃいませ!」という明るい女性の声が迎えてくれて一安心。屋内は昔懐かしい囲炉裏や大黒柱などがそのまま残されていて、子供の頃よく遊びに行った田舎の家を想い出す。
メニューはやはり「お好み焼き」と、寿司とは言っても「手巻き寿司」。だが鉄火やネギトロ、蟹味噌巻きまで14種類もある。お好み焼きや焼きそばは鉄板の上で自分で調理するようだ。 オーダーしたのはお好み焼きの定番「豚玉」683円。具をよくかき混ぜてオイルを引いた熱い鉄板の上に流し込む。暫しの後裏返してひたすら火が通るのを待つ。見るからに美味しそうでしょ?
手巻き寿司はどれも189円。この店の値段は細かい。鉄火巻を頼んだがネタが新鮮でとても美味しい。なるほど、寿司ネタもお好み焼きに入れるエビ、イカ、タコも同じ海産物である。 デザートは洋梨のシャーベット400円。常連客らしいご婦人方が口を揃えて注文していたのでつい釣られてしまった。シャリbutネットリの風味と食感に納得。
営業時間:12:30−14:00、16:30−21:00 定休日:毎火曜日&第1・第3月曜日
掛川B級グルメ PartU

まだまだあります。掛川の美味しいお店、ヘンな店。

さわやか/天錦/いなてん/おもいでの家/とんかつゆたか




「さわやか」のげんこつハンバーグ
チキンも付いた「よくばりコンビ」は672円 店内は何時も地元客で賑わっている 店もスタッフもさわやかでよろしい
国産牛肉100%のこのハンバーグは、文字通りげんこつのような分厚さだがこの上なく美味しい。表面は炭火でこんがりと焼かれているが中はまだ少し赤いままだ。この位が一番美味しい焼き加減であると店では主張している。 熱い鉄板の上に丸ごと置かれて出てくるげんこつは、よく訓練された店員によって客の前で真っ二つに割られ、中の赤い面が鉄板に押し付けられてからソース(オニオンかデミグラを選ぶ)をかけられるが、その瞬間ジャーッとはねが上がる。それをテーブル上の紙マットを折り曲げて防ぎつつ暫く収まるのを待つのがお約束である。
現在では掛川だけでも2店あり、浜松や磐田、袋井などにも多くの店を展開する「さわやか」は、掛川の隣町である菊川が発祥の地だそうだが、確か昔は単なる郊外型の喫茶店だったはずだ。それにここの「げんこつハンバーグ」は以前浜松に住んでいた頃に、鍛治町の「ハングリー・タイガー」という店で食べたハンバーグと瓜二つである。その点をベテランの店長に質すと「浜松のハングリー・タイガーが経営不振で閉店した折に転職してきた料理人がこのハンバーグのノウハウをもたらし、それが大ヒットして喫茶店からレストランに模様替えした」とのことだった。納得。また店長は「中が赤い調理法は本来保健所から禁止されているが、当店は長年の品質管理の実績によって特別に許可されている」とのPRも忘れなかった。静岡県西部に住む人はこの安くて美味しい「さわやか」のハンバーグを食べられる恩恵に感謝しなくてはいけない。
「いなてん」の焼きうどん
時々無性に食べたくなるものに「焼きうどん」がある。ところがこれを食べさせてくれるところが実に少ないのだ。「焼きそば」は中華料理店に行けば必ずあるが「焼きうどん」はなぜか蕎麦屋や和食屋へ行ってもない。一体何料理なんだろう?国道沿いの「いなてん」は僕にとって貴重な店である。
この店を一言で分類するのは難しい。食事メニューだけでも和・洋・中、合わせて60種以上あり、冬は雑炊、夏は冷麦まで出すのに、外観は洒落たロッジ風喫茶店で、実際コーヒーを注文するとサイフォンで丁寧に淹れてくれる。何れにせよ天ぷら屋のような店名は実態に照らして似つかわしくないが、その由縁を尋ねると、この店のおばあちゃんは昔家の軒先で天ぷらの惣菜を作って売っていたが、何時かちゃんとした店が持てますようにと裏山のお稲荷さんに毎日欠かさずお参りに行った。その御利益あってか商売繁盛し、とうとう願いが叶ったので、お稲荷さんのご恩を忘れないようにと「いなり+てんぷら」で「いなてん」と付けたのだそうだ。ええ話やー。
「焼きうどん」の味はさっぱりした塩味ベースだが、かつお節や紅生姜が乗っていて、お醤油を掛けても美味しい。僕はいつも半分醤油、半分ソースで戴く。
焼きうどん650円 丸太を組み上げた山小屋風の明るい店内 国道1号線沿いの丘の上に建つ
「天錦」の天丼
しじみ汁が付いて1,000円
おきて破りだが、浜松の店を一つ。昼間浜松に用事ができると必ず立ち寄る「天錦(てんきん)」の天丼は天下一品で、もう20年以上前から贔屓にしている。
田町の裏通りにひっそりとある
10人しか座れないカウンターだけの小さな店で、昼は2時間しかやってないから、いつも外に人が並んで待っている。ねじり鉢巻に落語家のような風情のここの主人は、ネタを手づかみで油の中に入れるばかりか、卵をお手玉のように投げて割ったり、菜箸をリズミカルに鳴らしながら盛り付けたり、どんぶりの蓋を空中でクルクルっと回してからタレを切ったり、とにかく只者ではない。沢山の新鮮なネタの下には半熟の卵の黄身の天ぷらが入っていて、これを箸で潰しながらネタやご飯を絡めて食べると絶妙な味のハーモニーが生み出され、病み付きになること請け合いである。
「とんかつゆたか」の串かつ
この看板からして只者ではない
掛川には残念ながら美味しいとんかつ屋がないが、最近西隣の磐田(いわた)市で偶然旨い店を見つけた。JRが送電線故障で磐田駅で立ち往生した時、偶々北口から歩いて1分のこの店に入って病み付きになってしまった。
串かつ定食は1102円だが1100円しか受け取らない
まず、肉質が良い。ピーク時を外して行ってみると、初老の律儀そうなご主人が豚肉の塊を実に丁寧に捌いているのをカウンター越しに見ることが出来る。顔を近づけて細かく包丁を入れる様子は、まるで肉と会話をしているようだ。そして衣が軽い。言葉で表せば、パフパフしている。そして全然油っぽくないので、幾ら食べても胃にもたれないのだ。どうやったらあんなに軽く揚がるのか、見ている限り特別な作業はないようだが、パン粉と油に秘密がありそうだ。ロースやヒレも勿論旨いが、僕が一番気に入っているのが串かつだ。串かつ自体がメニューにない店が多い(手間が掛かる割りに高い値段が付けられないから?)し、ここのねぎは、ありがちな玉ねぎではなく、長ねぎを使っている。長ねぎがベストと信じてきたので我が意を得たりの心境だ。月に一、二度は途中下車してお邪魔している。

 (2008.04 終了)