Arundos(アルンドス)は近年ドイツで高い評価を受けているリード・メーカーです。クラリネットの専門教育を受け音楽教師となったオーナーのOssig(オシッヒ)さんが趣味で始めたリード製作は順調に軌道に乗り、現在では年間100万枚以上を製作するまでに成長しています。将来はマウスピースの製作も手掛けたいというOssigさんは工房の隅々まで見学・撮影することを許可してくれました。

ケルンから東に100Km近く入った山中の
Schladernという村にその工房はありました。
手前が工房、奥が母屋。
ドイツ伝統の美しい木組みの家です。
製作工程@
リードの素材は2つの木材商社から南フランス産の物を調達。
中国産は安いけれど材質が悪い(色、密度、加工精度等)とのこと。
商社で2年、この工房で1年寝かしてから加工されますが、素材は余り寝かしすぎても良くないそうです。
パイプが曲がっているものや色が悪いものは、この段階で惜しげもなく捨てられます。
Aプロペラのような形をした刃物の上に縦にパイプを置いて上から木槌で叩くとパイプが5等分(写真)されます。
テナー・サックスのように大きなリードの場合は4等分にするそう。
B従業員の女性がリードの長さと幅を回転のこぎりで適正な寸法に切断します。
Cこれはリードの底面を平らに削る機械です。
トレイにリードをセットして手前から奥へ送っていくと、高速で回転している円盤状のやすりが底面を平滑に削ります。
大量の粉塵が出る上に、しっかり固定されていないとリードが飛び跳ね危険なので、全面をアクリル板で覆っています。
D切削が終わり、トレイを引き出します。
首尾よく18枚のリードの底面がきれいに削れたようです。
Eこれはリードの先端部分をある程度まで薄く削る器具です。
次の工程における刃物の負担を軽減するのが目的でしょう。
レバーを手前に引くと、鋭利な刃がリードの先端部分を斜めにそぎ落とします。
Fこれが製作工程の心臓部分にあたるリード切削マシンです。
機械の中央にリードの原型となる金型をセットし、前後左右にそれを倣いながら鋭い刃がリードを切削していきます。
ネームプレートなどを彫るコピーマシンと同じ原理ながら極めて高い精密が要求されます。
このマシンは2枚同時に製作しますが、4枚を同時に製作できるマシンも備えています。
Gこれが最重要部品、ある一つのモデルの原器とも言うべき金型。
この形状の開発のためにリードメーカーと開発協力者である演奏家は心血を注ぎます。
これらの金型が何十も収められたスチールキャビネットをOssigさんはSchatzkammer(シャッツカンマー:宝物殿)と呼んでいます。
Hいよいよ仕上げ工程に入ります。
これはリードの先端部分を丸く整えるリードカッターで、スタンプのように上から押さえます。
この形状がマウスピースの先端の形状とぴったり合っていることが重要なことはご存知の通りです。
I左のリードが右のように仕上がり、
とうとうリードが完成しました。
Ossigさん、嬉しそうですね!
J完成したリードは長さや幅の寸法が正しいかどうか器具を使って検査されます。
クラリネット用には、沢山のドイツ・タイプの他ウィーン・タイプも2モデル製作しています。
Kリードは1枚1枚強度測定器にかけられ、2半、3、3半というようにグループ分けされます。
先端の厚みではなく先端部分の強度(反発力)なのだということを初めて知りました。
強度の数値は、ヴァンドレン社製のリードに合わせてあるとの事でしたが、同じ箱でもある幅で当然バラつきが出ます。
これは是非1台欲しいと思った器械です。
L黄色いパッケージがArundosのオリジナルです。
セゲルケ他幾つか
のメーカーのOEMも手掛けているので、メーカー名と強度をリードの背面にレーザー光線を使って彫り込んだ後、それぞれのパッケージに手作業で箱詰めされ出荷されます。
*リード1枚作るのに随分と手間ひまが掛かるものだなー、というのが見学し終わった感想です。

(2009/11/10 by Gm)
ドイツリード製作工程
Arundos工房訪問記