決して管楽器の名手に出会わなかったはずがないが、楽曲を通じて壮大な新しい世界を創造したいベートーヴェンにとって、単音しか出せず、音量や表現の幅も限られる管楽器には興味が湧かなかったのかも知れない。 作品20のセプテットでも分かるように、ベートーヴェンは若い頃からクラリネットを熟知していた。フルートではなく、オーボエでもなく、クラリネットにソロ・ヴァイオリンと同等の役割を演じさせている。 この明るく親しみやすい曲はたちまち大人気となったが、ベートーヴェン自身は、「あのセプテットを書いたベートーヴェンさん」と言われるのを大層嫌ったという。 なぜか時の女帝マリア・テレジア(作曲当時没後20年)に献呈されたセプテットは、サロン音楽の域を出ない娯楽作品と自覚していたのだろうか。 もし、天国にいるベートーヴェンに、「クラリネットはお好きでしたか?」と訊いたら何と答えるだろう? 「ん?そんなこと考えたこともないが、ま、何かと便利な楽器ではあったな」かも。 |
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2016/11/02 by Gm |