ヴィルシャー訪問記
ニュルンベルクのマイスター・シュピーラー




アレキサンダー・ヴィルシャー(Alexander willscher)さんは、地元ニュルンベルク交響楽団のソロ・クラリネット奏者を務める傍ら、2000年に会社を設立。以来、AWブランドで高品質なリードとマウスピースを製作し続けている。特にマウスピースの40Bは日本でも大人気だが、様々な高精度工作機械を駆使しての徹底した自動化と標準化がAWの特徴と言えるだろう。今回、コンピュータ制御の精密な切削機械を使って、ヴィルシャーさんに、ヘアマン先生と同じバーンのマウスピースを造って頂いた。
ニュルンベルク郊外にあるヴィルシャーの工房は、一見普通の住宅のようだ   先生が来訪の趣旨を伝えるとヴィルシャーさんは快くコンピューターを操作し始めた
数多いマウスピースのデータ・ベースの中からヘアマン先生のデータを捜す。中には、Jettel、Hindl(er?)、Jochenといったちょっと気になる名前も   これが先生のバーンの形状。横軸がフェイシング(長さ)、縦軸がオープニング(広さ)だろうか?複雑な曲線を描いているが、リードを固定するテーブル部分を少し削って凹ませているように見える
僕が日本から持参した10数個のマウスピースの中から、ヴィルシャーさんはViotto製のG3を2個とSM1個を選んだ。ブリツァーは材質の関係でヘアマン先生が最初に除外   コンピューター制御の切削マシンにマウスピースを慎重にセットするヴィルシャーさんの目は真剣そのもの
モーターに直結された高速回転する刃が右へ移動しながらバーンを徐々に切削していく。飛び散る粉末がライトの光を受けてまるで火花のように見える   切削後のマウスピースに透明なガラス板を貼り付けて仕上がり具合をチェックする
ヘアマン先生が仕上がったマウスピースを試奏する。ほんの数十秒で特徴を把握し、改善すべき点をヴィルシャーさんに伝える
  先生のコメントを受けてヴィルシャーさんはチャンバー内のバッフルと呼ばれる部分を、特殊な工具を使って削りだした。Viottoも必ずバッフルが削ってあるが、ここにも音造りのノウハウが隠されているに違いない。最後はやはり手仕事になるのだろう
完成した3個のマウスピース。左(SM)は音色が柔らかく、ハイトーンとスラーが容易だが、音量は少ない。右(G3)は音量豊かだが注意しないと音が開き気味になる。中央(G3)が最もバランスが良いようだ   工房内に並ぶ高額そうな機械類。リードの製作は殆んど自動化されている
ヘアマン先生とヴィルシャーさんは20年来の友人。厚い信頼関係で結ばれている。ヴィルシャーさん、ヘアマン先生、ありがとうございました!

(2009.12.17 by Gm)