ベールマンのアレグロ/後日談
 聴いた、見た、勝った?

2005年7月23日「国際クラリネットフェストTAMA東京」で偶然「ベールマンのアレグロ」を実演で聴く幸運に恵まれた。クラフェスのスケジュール表にはC・フォーコンプレが “ウェーバーとベールマンの作品を演奏”としか書いてなかったし、コンサートプログラムに書かれていたH・ベールマン作曲クラリネット五重奏曲第3番作品23が、あの“アダージョ付き”だとは迂闊なことに演奏が始まるまで気付かなかった。

 C・Faucomprez

結論を言えば1楽章と3楽章はやはり楽譜以上でも以下でもなかった。さして魅力的とも思えない主題を変奏や装飾音で飾り立て、これでもかと言わんばかりに駆け巡らせている。全体に陰影に乏しく落ち着きや風格が感じられない。弦はあくまでクラの引き立て役に徹していて、伴奏型も平凡で響きも薄い。同時に演奏されたのがウェーバーの五重奏だから相手も悪すぎた。作曲にもプロとアマがあるのだ。

フォーコンプレは、このテクニカルな両アレグロを実に達者に演奏したが、肝心のアダージョで2回もミスをしたのはご愛嬌だろう。ラテン系のフランス人にはゲルマン系の濃厚な情念やペーソスは些か苦手には違いない。
ただ、ウェーバーの第4楽章を演奏中に震度5の地震があり客席がざわついたが、フォーコンプレは全く意に介さず演奏を続行したので、演奏後に妙な喝采を浴びていた。

さて、あのアダージョはベールマンとは別人の作だという仮説は私の中で確信に変わった。