ダッタン人との戦い 

ダッタン人を吹く羽目になったエーラー吹きのために 

 

 
 
人にはそれぞれ絶対やりたくないという曲があるものだ。Gmにとってはボロディン「ダッタン人の踊り」がその一つである。もちろん人気曲だけにきれいなところもあるが、まるで「インディー・ジョーンズ」に出てくる未開人の踊りを想起させる粗野なリズムと喧騒が我慢ならない。

だが、ローテーションやセクション内の事情によって今回お鉢が回ってきてしまった。しかも今まで聴いたこともない「行進曲」と「娘たちの踊り」も一緒にやるという。
どれも音色や音程よりもただひたすらスピード重視だから、フィンガリングにハンデを負うエーラー吹きは替え指やトリルキイ、パテントcisなどを駆使してそれなりに自衛しなければならない。

 「娘たちの踊り」(第8曲)  ※「行進曲」(第18曲)には特段の難所なし
 
 冒頭ソロの2小節が全て。最初のdは発音が良く指もコンパクトな右手薬指のバナナキイを、cは下から2つ目のサイドキイを使う。序奏が4小節しかないので当初はテンポを掴めず苦労する。最初の4分音符を音価通り倍に延ばせるかが鍵だが、つい速さに負けて短くなると伴奏とずれてしまう。音が転ばぬよう1小節60から80位のテンポで繰り返し練習するしかない。ベームはラクでいいね!などと(思っても)言わぬのがエーラー吹きの矜持というものだ。+マークはパテントcisだが、後半ffの半音階ソロ直前2音はブレスのため割愛する。
 
中間部に「シェヘラザード」によく似たソロが出てくる。1小節目と5小節目のfは左手小指(ブロークン・ハート・キイの上半分)を使う。普段余り使わない小さなキイなので踏み外さないようソロの直前に小指の先で位置を確認しておく習慣をつけるとよい。

 「ダッタン人の踊り」(第17曲)
 
この曲も序奏が2小節しかないが、リズムがおおらかなのでずっと気がラク。ソロの3拍目のdと4拍目のcはサイドキイを使う。dは低くなりがちなので思いっきり締め上げる。これもアクセントとタイが付いた1拍目と2拍目の音価を充分保って3拍目の頭をぴったり合わせることが成功の秘訣。ソロ5小節目の右手は全部押さえたまま。ブレスはソロの前で大きく吸って6小節間を一気に吹く。11小節目からのトゥッティーはユニゾンの2ndに任せ、直前の小節ではブレスをしない方がきれいだ。
 
3曲目Presto後半のA管への持ち替え。 終曲まで9小節しかないので練習番号Tの前で持ち替え、記譜より半音上へ読み替えればよい。
 
最初の小節3拍目のgは試行錯誤の結果上のようにした。fがしっかり鳴っていればかなりの速さまで対応できる。後半はパテントcisのオンパレードだが他楽器とのユニゾンなのが救われる。

本番は幸い大きなミスなく無事に終えられ、マエストロやコンミス先生からもお褒めを頂けた。大嫌いだったこの曲も2ヶ月間付き合った今では「ダッタン人の踊り」だけならまたやっても良いかなと思っている。

 2022.04.25 by Gm