浜松市楽器博物館
古今東西の面白楽器(午前の部)




浜松駅北口徒歩3分、9:30−17:00
第2・第4水曜休、入館料;大人400円
世界第1と第2の規模を誇る楽器メーカー、ヤマハとカワイがある静岡県浜松市は、30年以上も前から「楽器のまちから音楽のまちへ」を合言葉に音楽文化の向上に努めています。
様々な取り組みの一環として、1995年に設立されたこの楽器博物館は、日本初の公立楽器博物館であり、ハード/ソフト両面の充実ぶりが高く評価されて全国から来館者が絶えず、遂に2007年1月には100万人を突破したそうです。
特色としては先ず、西洋楽器のみならず、和楽器や世界中の民族楽器がバランスよく収集・展示している点が挙げられるでしょう。さらに、展示品の中には、昔懐かしい足踏みオルガンのように来館者が演奏できる物や、実際に動かして楽器の構造を理解できるカット・モデルなども用意されています。また、目の前にある楽器の音や演奏を、ヘッドフォンを通して確認できるようになっているのもユニークです。例えば、横山勝也氏による尺八の音色は余りに凄いので、何度も聴き直したくなります。なお、博物館内や付属の小ホールでは、毎月のように所蔵している楽器を使用したコンサートやレクチャー、様々な楽器のワークショップなどが企画されています。行く度に新たな発見や感動があって飽きる事がありません。
受付に荷物を預けて入場料400円(安い!)を支払い、館内に一歩足を踏み入れると、そこはインドネシアはガムラン音楽の世界。全ての楽器はキンキラキンです。
数年前、ジャカルタの空港で実際の演奏を聴いたことがありました。僕の鈍感な耳には即興演奏のように聴こえましたが、奏者はちゃんと楽譜を見て演奏していました。
では、お目当ての管楽器群を見るために先ずは地下の展示室へと移動しましょう。
館内はフラッシュを焚いての写真撮影も許されています。(但し、三脚は禁止)
広々とした地下展示室には、ヴァイオリン属、ハープ、ギター、バンジョーといった弦楽器群の他、様々な国や年代の木・金管楽器、打楽器類、鍵盤楽器等がゆったりと配置されています。そのため、来館者は楽器を様々な角度からじっくりと鑑賞することができます。
各楽器の前にはヘッドフォンが設置されていて、その楽器が実際に演奏されている音を聴くことができます。専門家による演奏はレベルが高く、劣化しない音源を使用しているので、音質も非常にクリアーです。
僕が最も興味を持っているクラリネットの展示は、残念ながら質・量ともに期待外れでした。目録によれば、この数倍のコレクションを所有しているはずですが、なぜか全部は陳列してくれません。
因みに、現在展示されているツゲのクラリネットの多くは、19世紀中頃に製作された、ジンガー(Singer)というカールスルーエの工房製。19世紀初頭というバセット・ホルンはメーカー不明です。
右端のターロガトーやその隣のオクタヴィンは円錐管なので、クラリネットじゃないだろ、という突っ込みを入れたくなります。
クラリネットの隣のブースには、ダブルリード楽器のオーボエ属やファゴット(多分バッソンも)が展示されていますが、門外漢の僕には、その価値が解かりません。
昔、オーボエのコレクションの中に、非常に歴史的価値の高い1本があると聞いたことがありますが、どれがそうなのかは不明のままです。
サクソフォンに関心がない僕でさえ、きっと価値があるに違いないと確信するのは、開発者アドルフ・サックス自身が製作したサクソフォン。近付いて見ると、キイのメカはとってもシンプルです。
ソプラノからバリトンまで、5本が揃っていて、右端の1本は珍しくもC管です。当時のサックスは、現在のものより管体が薄く、トーンホールも小さいので、音量は少ないが、より柔らかい音がしました。そのことは、ヘッドフォンでも確認できます。
こちらは、マニア垂涎の歴史的金管楽器コーナー。手前から竜の頭を持ったラッシャン(ロシアの)・バスーン(といってもファゴットではない)、メンデルスゾーンが「真夏の夜の夢」で使用した、現在のチューバにあたるオフィクレイドが3本、蛇のような形をしたセルパン3本、その奥にはナチュラルホルンも見えます。何れも19世紀前半の楽器。演奏しやすいように、長い管を如何にコンパクトにまとめるか、大きな穴や遠くの穴を如何に塞ぐか、幾多先人が様々な知恵を絞った跡が伺えて興味深いです。
中にはアイデア倒れで消えていった楽器も多々あります。19世紀中頃に作られた、7つのベルを持つ楽器もその一つ。7つあるピストンを押すと、それぞれのベルから、ド、レ、ミ、ファ、ソ、ラ、シの7つの音が出るという代物。誰でも最初は、それは便利!と思うでしょうが、数年前にレプリカを吹い印象では、とても実用にはなりません。管が複雑で重い上に、両手の指を7本も使うので却って演奏が遅くなってしまいます。何より派生音が出てきたらどうするのでしょう?でも、この楽器をストリートで演奏したら人垣ができる事請け合いです。
地階には鍵盤楽器コーナーもあります。チェンバロやチェレスタは現在でも目にするので目新しくはありませんが、ピアノは、現在の形に落ち着くまでに、随分へんてこりんな物も造られたようです。
真ん中のピアノを見ると、鍵盤楽器のルーツはギリシャ時代の竪琴であり、縦に張られた長さの異なる弦を指で爪弾く代わりに、鳥の羽で引っ掻いたり、ハンマーで叩いたりするに過ぎないことが解ります。今でもグランドピアノの大屋根を開けると、中に巨大なハープが横になって寝ているのを発見できます。
暫らく足を止めて見入ったのは、生々しいベートーヴェンのライブマスク(左)とデスマスク(右)。「お手を触れないで下さい」と注意書きがありますが、突然スーパースターと出遭った時のように、つい触りたくなってしまいます。
告白すると、学生時代、ルーブル美術館でミロのビーナスのつま先にちょこっと触った前科があります。
お昼になりました。博物館は出入り自由です。せっかく浜松に来たのですから、美味しいうなぎを食べましょう。博物館から歩いて3分、新幹線ガード沿いにある「うな米」は、昔からある小さなうなぎ屋さんです。駅前ではないので観光客はほとんど来ません。景気どう?と聞くと「だめだねー。不況で、お客さんは皆安くて何でもあるファミレスへ行っちゃう。遠くからのお客さんが、もう無いかと思ったって言いながら寄ってくれます。息子も跡を継がないし、そろそろ辞めようかと思ってますよ」と気弱な事を言う。浜松に行った折には立ち寄って励ましてやって下さい。
三ケ日みかんの産地なので「ご自由にどうぞ」と
一番安いマツは1,360円。充分満足できます 砂山町331−8 Tel053−453−5226

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