ヘアマン先生のレッスン (随時更新)
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レッスンのポイントと弟子のお節介な解説 |
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ヘアマン先生のレッスン内容をできるだけ忠実に先生の言葉を使って再現します。全てのドイツ管吹きと、その志望者に捧げます。補足(*印)は意味が分からなければ無視してください。 |
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Ⅰ準備編 |
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1.楽器の組み立て | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
キイを押していない状態で、上下のリングがインラインになるように上・下管を接合します。 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
*上記の楽器のリングキイを押すと、上下のリングが少しクローズドな状態になります。余談:ライスターは、手首が丸くなる方がフィンガリングに有利との理由で極端なクローズドですが、その分cis/gisキイがすごーく長くなっています。 |
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2.リードについて | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
1枚のリードを長時間吹いて濡らし過ぎると、反ったり膨張したりして変形し元に戻らなくなる。長くとも「1時間に1枚はリードを替えるべきです」。 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
*こまめにリードを替えることにより、変形の少ないリードを沢山持つことができる。その方が良い音で練習できるし、経済的でもある、という考え方です。先生は演奏前にリードを湿らせ過ぎるのを好まないようです。水分を含んで膨らんでしまった部分は、ガラス板の上に置いた800番位のサンドペーパーで平らに修正します。 僕は最初に先生が着けてくれたリードが最適なものだと思い込み、ずっとそれで吹いていました。ある日先生曰く、「ああ、あれは、たまたまそこにあったのを着けただけだよ」だって。因みに先生の仕掛けはウィーン系なので、リードはSteuerのAdvantageの3半を使用しているそうです。 なお、リードを取り付ける位置については、マウスピースの先端と同じ高さが標準。リードが柔らかい場合は少し上へ、厚く感じる場合は少し下へ移動させます。 |
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3.紐:ひも(Schnur:シュヌア)について | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
リガチャー?問題外! | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
*理由は、紐の方が音が良いから。それだけ。但し、紐の素材が柔らかくて伸びてしまうのはだめだそうです。今までムジークハレで、NDR、ハンブルク交響楽団、ハンブルク・フィルを聴きましたが、クラリネット奏者は全員が紐を使用していました。やはり、ドイツでは基本紐のようです。ですが、若手奏者、音大生を中心に、BGやGF-System等のリガチャーを使用する人が増えてきているのも事実です。 なお、先生に「大津・籐三郎紐」をプレゼントしたところ、「これは細いのに強くて延びない」と大層気に入られました。 b |
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4.練習時の姿勢 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
必ず大きな鏡の前に立って練習します。姿勢が傾いていないか?、顔はまっすぐ正面を向いているか?、楽器は体の中心にあるか?、毎日チェックします。「鏡は一番良い先生です」。 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
*Gmの場合は、やや右肩が上がり、頭が右に傾いているとおっしゃいます。また、楽器も垂直ではなく、右手の方に引っ張られているそうです。「自分も同じ問題を抱えているけれど、毎日鏡を見ながら矯正することが大事なんだ」。 |
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5.マウスピースをくわえる位置 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
吹きやすければどこでも良い。 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
「プリンツはこんな所だったよ」と言って、先生は20mmくらいの所を指差しましたが、俄かには信じられない程の深さです。なお、先生のマウスピースは楽器と同じライトナー&クラウス製ですが、開きが少なく、フェイシングが長いヴィーナー・バーン(Wiener Bahn)だそうです。 |
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Ⅱ演奏編 |
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1.アンブシュア | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
頬はいかなる場合も膨らませてはいけません。 |
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消沈した僕に「学生の頃、僕もよくプリンツ先生から同じ事を言われたものさ」、とフォローしてくださった。 優しい先生である。 それからアンブシュアのチェックが始まった。先生は、僕が上のcisやdで少し頬を膨らませる癖がある。そうすると唇の周りの筋肉が緊張して硬くなり、必要以上に噛むのでリードが充分に振動しない。逆に、頬をある程度緊張させることで唇がリラックスしてゆるくなり、充分な振動と音量が得られる。つまり、頬と唇は相反関係にある、と仰るのだ。 更にこのアンブシュアでは以下のようにピアノでレガーティッシモが要求される場面でサイドキイが使えません。
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先生から教えて頂いた実験方法を紹介します。 1、左手親指と人差し指だけで楽器を支えます。(親指はトーンホール、人差し指はaキイの上方) 2、頬を膨らませて息を吹き込みます。cisの替え指なのでそれに近い音が出るはずですが(多分)出ません。 3、右手で頬を挟み、頬を緊張させます。唇が緩みcisが(多分)出ます。 *頬っぺたを膨らますな、とはよく聞く言葉ですが、それがなぜかを教えてくれたのはヘアマン先生だけでした。 大事なことは下唇の赤い部分を口の中に引っ込めないこと。下唇を巻いたり、横に引いたりせず、赤い肉厚の部分でリードをくるむことが柔らかい音を出す秘訣です。 *これはもう読んで字の如しですが、フランス管(ベーム式)メソッドとの大きな違いかもしれません。 口の中は常に、母音のA(独語:アー)、場合によってはO(オー)、U(ウー)を発音するときの形に保ちます。いかなる場合もE(エー)、またはI(イー)の形になってはいけません。 *ドイツ管に限らず、深みのある安定した音を出すためには、口の中(奥)を拡げることが大事です。 |
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2.呼吸と発音 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
肺と楽器は1本のパイプで繋がっているかのように、途中何の抵抗もあってはなりません。 息が全て音になるよう、喉を緊張させて縮めたりしないように。 |
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音は唇で創るものです。全ての音域を舌を使わずに発音できるようになることが大切です。 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
*一番衝撃を受けたのが「唇(Lippen)で音を創る」でした。ちょっと説明が難しいですが、先生は息をホッツ、ホッツ、ホッツ、と吐くように(あたかも口笛を吹くように)音を出せば良い、ただそれだけのことなのだと言います。逆に言えば、リードをきつく締め上げ、肺からプレッシャーをかけて息を送り込むというような奏法は間違っているというのです。息が効率良く音になれば、タンギングをせずに(つまり舌の助けを借りずに)最低音から最高音まで発音できます。 そうすることで、心身ともにリラックスした状態で演奏(音楽)に専念できるようになるのです。 実際にやってみると、中音域は比較的簡単ですが、最低音域はひっくり返りやすく、高音域は音程が下がりがちになるかも知れません。ポイントは、高音域になっても決して口を締めないことと、息を吹き込むことを忘れないことです。 |
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3.タンギング | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
1.なぜタンギングをするのか? | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
タンギングは、「はっきりと発音する」というアーティキュレーションの一種です。 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
*これも目からウロコでした。ライスターがレッスンで、「Pではタンギングせずに音を出しなさい」と言ったことと符合しますが、先生はさらに、ffでもタンギングしない場合もあるし、ppでもタンギングする場合もある。タンギングする、しないは、その音やフレーズをどう吹くべきかによると言います。まさに正鵠を射る言葉だと思いました。 かつて、フランスに留学経験のある有名クラリネット奏者に、「音の出だしは必ずツバを吐くようにタンギングしなさい」と教えられたこととは天地の開きがあります。 なお、ヘアマン先生の恩師であるアルフレート・プリンツ(元ウィーンフィル首席奏者)は、曲の出だしなどでもめったにタンギングをしなかったそうですが、モーツァルトやウェーバーの協奏曲などでのタンギングは「完璧だった」そうです。 |
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発音とタンギングの練習 |
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1.任意の音をロングトーンします。最初は開放のソや下のドから始めるのが良いでしょう。 「かすかな息の音の中から音が生まれ、音が消えてからも息の音だけが残るように」。 |
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2.必ず同じ音を使います。1拍60位のテンポで、舌を使わず息だけで発音します。できるだけ 短く発音しますが、腹筋に頼りすぎてお腹がペコペコならないように。口笛を吹く要領です。 3.次に舌を使って発音します。タンギングにおける舌の位置は次項を参考にしてください。 4.最期は、下記のリズムを使って舌を速く動かす練習です。次の拍の頭まで、ぎりぎり待って 発音することがポイントです。 |
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以上の練習を最低音から最高音域の任意の音で繰り返します。 |
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2.舌の位置 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
管楽器にとって最も重要なことは、楽器の中に常に息が送り込まれていることです。それはホバー・クラフトが空気の層によって波の上に安定して静止していられるのに似ています。舌が息の流れを妨げないようリードの先から少し深い部分に接触します。 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
*タンギングにおける舌の位置は、外からは窺い知れないこともあり、ドイツ管に限らずクラリネット学習者にとって大きな疑問であり課題でしょう。教則本や専門誌の記事にも様々な記述があるので、一体どれを信じてよいのか分かりません。中には自分の弟子にも秘密にする奏者もいるようです。私は長年、舌とリードは接触面積が少ないほど良いと信じ、リードの先端2~3mmの所を舌の先でタンギングしていたので、ヘアマン先生からリードの先端から10mmほどの所を示された時にはびっくり仰天しました。ところが実際その深い位置でタンギングしてみると、息がスムーズに流れるので、音が豊かに、生き生きしてくるようです。更に舌もリラックスできるので、却ってタンギング・スピードが10目盛近く上がったのは望外の喜びでした。「プロの中にもタンギングに問題を抱えている人は沢山いる」そうです。 |
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旧タンギング:緊張した舌の動きがスムーズな息の流れを妨げる | 新タンギング:リラックスした舌は息を乱すことなく速く動く | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
4.レガート | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
一つの音から次の音に移る時は、6つのステップを踏みます。 1.出す音をイメージする → 2.演奏する → 3.音をコントロールする → 4.次の音をイメージする → 5.準備する(呼吸など) → 6.演奏する。 これらが完全なら、グリッサンドのように滑らかに移行できます。 |
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*次の音をイメージして呼吸や指やアンブシュアの準備をするステップが大事です。指も機械的に動かすのではなく、静かにゆっくりと動かします。下の楽譜はレッスン用にヘアマン先生が書いてくれた練習曲の一部です。 |
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レガートの練習 |
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1.まず、エーラーにとって一番易しいト長調から始めます。上のソまで行ったら、今度は上のソを起点として1オクターブ下がってきます。各ステップを頭の中で意識しながら、次の音に移るまでに5秒位かけます。基音(ソ)に戻る時のレガートも忘れないように。 2.次は、第3間のドを起点にハ長調の1オクターブ往復です。これも基本の調ですが、音程が開くにつれてアンブシュアの柔軟性が求められます。ウェーバーの2番コンチェルト第3楽章の冒頭を吹くには避けて通れませんね。 3.次は、第2間喉音のラを起点にイ長調(♯3つ)。初めてレジスター・キイをまたいだレガートの練習です。レガートとともに音色が変わらないよう注意すること。また、音が上がるに従って息の吹き込みが必要です。 4.最後は、下第1線レ♭(desです)を起点に変ニ長調(♭5つ)で練習します。さらに動かすキイが増えるので左右の指のスムーズな連携が必要となります。 *レッスンは何時もレガートの練習から始まりますが、必ずしも全部を吹くわけではありません。自分なりに工夫して様々な調性で練習てみるのも良いでしょう。「僕は33年間、毎日この練習を続けているんだよ」と先生。
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5.フィンガリング | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
1.指の形 演奏中は指を高く上げてはいけません。使っていない指もキイにコンタクトしているごとが大事です。また、左右の小指はできるだけアーチ型を保つように。 |
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*日頃の練習から鏡を見て指が上がりすぎていないかチェックします。特にA/Eを吹く時の右手小指はF/Cキイに、C/Gでは、右手中指がカバードキイに軽くタッチしていることが理想です。長年の指の癖を取り除くのは大変ですが、クラリネットに限らず名手と呼ばれる演奏家はすべからく指の動きが見えないほどです。 *小指のアーチは、キイとの接触面積を少なくして、h/cisとc/esのローラーをスムーズに操作するためですが、小指が短い僕には結構辛い要求です。 |
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2.ミ♭(es/dis)⇔ファ(f)スライド 右手人差し指、第2関節の上の盛り上がっている部分を使います。ミ♭で立てていた人差し指を折るようにしてファに移ります。 |
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3.実戦的フィンガリング | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
時と場合に応じて様々なフィンガリングを使い分けますが、基本はガーベルです。 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
*普段の練習からできる限りドイツ管の伝統的な指使いであるガーベル(Gabel:フォークフィンガリング)を使います。理由は、楽器がガーベルを前提として調整されていることと、安易にキイに頼っているとキイが使えないフレーズで困るからです。当然ながら曲のテンポ、音程、フレージングなどによって使い分けます。 |
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スロート(喉音)の指使い | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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( Last Revised 2019.02.07 by Gm) |