エーラーさんのこと
おかげさまで幸せです




マタチッチに似ている?
エーラー式クラリネットの所以たる「エーラー・メカニック」の偉大なる創造者、オスカール・エーラー(Oskar Oehler)は、1858年2月5日にドレスデンの南西、チェコとの国境に近いアンナベルク(Annaberg)に生まれ、193610月1日にベルリンで死去したクラリネット奏者でありクラリネット製作者です。

エーラーさんに関する情報は少ないですが、故パメラ・ウェストン(Pamela Weston)女史の著作「More Clarinet Virtuosi of the Past」によれば、エーラーさんは15歳でオルガン製作者のもとへ奉公に出、その技術者として各地を旅する傍らミュンヘンのCarl BaermannやカッセルのA.Neff等、当時の一流奏者からクラリネットに関する知識を習得したそうです。きっと根っからの職人さんだったのでしょう。

WeideやHalle等のオーケストラに在籍した後、1881年にハンブルクのラウベ管弦楽団に入団、翌1882年にはベルリン・フィルハーモニー管弦楽団の設立発起人の一人となり、1888年までクラリネットの首席奏者を務めました。
BPO創立当時の写真
もしや中央がエーラーさん?

たいそうプライドが高く気難しい人だったらしく、1887年に、かのミュールフェルトが在籍していたマイニンゲン宮廷オーケストラからベルリン・フィルの初代常任指揮者に迎えられたハンス・フォン・ビューローに対し、自分に対する口の利き方が気に入らないという理由でクラリネットを投げつけ負傷させたという武勇伝?が伝えられています。

もしその逸話が本当なら、現在では立派に傷害致傷罪?で告訴されるところでしょうが、それもあってか翌年1888年にベルリン・フィルを退団し、既に前年ベルリン市内に開設していた工房でマウスピースの製作やクラリネットの改良に専念しました。

工房にて。壁には無数の冶具が
(ベルリン国立図書館)

ミューラー式やベールマン式クラリネットを元にしながら、クラリネット奏者ならではの改良を全面的に加え、ついには、特許「エーラー・メカニック」を備えた、22鍵と5リングキイのエーラー式クラリネットを考案したのです。これによる音程・音色の向上は目覚しく、現在でもドイツのプロオーケストラでは、エーラー式がクラリネットのスタンダードとなっています。

なお、ドイツのAクラスのオーケストラは今でも「ドイツ・システム(エーラー式)に限る」と明記されていて、ベーム式ではオ-ディションすら受けることができません。

因みに、本日はエーラーさんの69回目の命日に当たります。合掌。

(2005.10.01 last revised 2011.05.18 by Gm