ドイツ式やエーラー式、或いはウィーン・アカデミー式など「ドイツ管」と総称されるクラリネットの音色と、一般のベーム式、つまり「フランス管」の音色の違いはどこから生まれて来るのだろうか?勿論全ての楽器ついて言えることだが「音色」はその楽器を構成するあらゆる要素が複雑に絡みあって形成されている。クラリネットについて言えば、管体の材質や密度、肉厚、表面処理、内径や音孔の形状、ジョイントやベル・リングの有無、キイの素材、硬度や成型方法(鍛造、ワイヤー・カットが最も良いとされている)、メッキの種類や膜厚、果てはオイルの粘度、ネジや針バネ、芯金の材質にまで及ぶ。かつて、たった2cmのレジスター・キイの芯金をステンレスから軟鉄に替えただけで音色や吹き心地がガラリと変わって驚いたことがあった。
だが、クラリネットの音色に最も影響を与えるのは、音を創り出す「仕掛け」(リードやマウスピースなど)だ。仕掛けこそは「音源」そのものであり、川に喩えれば「源流」である。一般論として「上流」に近いほど音色に与える影響は大きく、「下流」に行くほど影響は少なくなると言える。元々の録音が悪いレコードは、どんなに高価なカートリッジやアンプやスピーカーを使っても良い音で再生できないのと同じである。では、ドイツ管の仕掛けとフランス管のとそれとは、どこが、どのように、どれほど異なるのだろうか?
手許にあるリードやマウスピースをノギスを使って計測してみよう。