ベーム式クラリネット(フランス管)の内径 下管の中ほどから急速に拡がっていく。 下管の下端に人差し指がすっぽり入る。 このメガホン効果によってより大きな音量と華やかな音色を得ている。だが気を付けないと音が開いて、けたたましく耳障りな音になりがちだが、屋外でマーチを吹くには最適だろう。 近年、なぜかクランポンやヤマハもドイツ管の内径に近いモデルを発売している。 |
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エーラー式クラリネット(ドイツ管)の内径 下管の最終端から約3cmまでほぼストレート。人差し指は狭くて入らない。 ドイツ管特有の深く温かい音色はこの伝統的な内径に負うところが大きい。 ライスターやプリンツのような音が出したいと思うならドイツ管に替えるしかない。 *グラフの縦軸はmm、横軸はcm |
ドイツやオーストリーの学校で主に使われている18キイのドイツ式。下のフルエーラー27キイとの違い分かりますか? | |
エーラー式とウィーン・アカデミー式 |
ACOのクラセクション |
エーラー式は今でもハンドメイドで製作されている(バンベルクのセゲルケ工房) |
<マウスピースとリードについて>
ドイツタイプとウィーンタイプのマウスピースは先端の開きやフェイシングの長さがかなり違うので、各々専用のリードを使用します。ドイツタイプのリードよりウィーンタイプの方が僅かに幅広ですが、それでも通常のフランス管用よりはやや狭く短いので、ベームより多少音量が落ちるのでしょう。
なお、多分あなたが使い慣れてきたヴァンドレンの5RVライヤーやB40などは、ドイツ管のタルにはゆるゆるで合いません。ドイツ管をフランス管の仕掛けで吹きたいときは、ティッシュかセロテープを一巻きして下さい。 |
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Q2-2 マウスピースはどこのが良いの? A: ドイツ・タイプのマウスピースは、ブランドの如何に拘わらず、ベースはほとんど独ツィンナー(Zinner)社が供給しているようです。ツィンナーやヴリツァーからも多数のモデルが出ていますが、ホルツではツィンナーをベースにヴィオット(Viotto)という謎の数学者?が開発したモデルが人気です。L−5(エルゴ)、SM(エスエム)、P+4(ペー・プラス・フォー)、N1(エヌ・アインス)、G3(ゲー・ドライ)、BF(ベー・エフ)などですが、カール・ライスターは現在、L−5ではなく、ツェレツケ特製のヴリツァーのマッピにヴァンドレンのV12やルピック56を付けて吹いているそうです。SMはザビーネ・マイヤーの略です(念の為)。あるベルリンの楽器屋さんは、『ザビーネ以外にSMを使っているプロなんか居ないよ』だって。男のプライドが許さないからでしょうか? Gmは音質の上品さが気に入ってP+4を長く吹いていました。過日ベルリン国立歌劇場のメンバーがホルツの練習に遊びに来た折に確認したところ、全員がP+4だったので大いに気を強くした次第です。P+4はドイツ版5RVライヤーと言ったところでしょうか。その後、もう少し音量が欲しくなりN1に、さらに各音域の音色の繋がりがよいG3に替えて現在まで愛用しています。
Q2-3 ドイツ管用リードのメーカーは?
A: 比較的手に入りやすいのはヴァンドレンでしょう。ホワイトマスターはドイツタイプ用、ブラックマスターはウィーンタイプ用です。米リコ(Rico)社からも結構良いドイツタイプのリードが国内発売されていますが、どちらもめったに売れないので常時置いている店は少ないかも知れません。シュトイヤー(Steuer)は歴史の長いドイツのメーカーで、ドイツタイプ用にS−100、800、900など5種類のカットが売り出されています。 価格が高いのと品質が不安定なのがちょっと不満ですが、密度ある落ち着いた響きを持っています。インターネットでも入手できますが、大久保にある石森管楽器さんに頼めば郵送してくれます。 私は長い間、先端が厚めで馬の背(ハート)部分が長めのシュトイヤーのS−800というモデルを愛用していましたが、何時の間にかショルダー部分がカットされなくなり、最近ではハート部分も目立って少なくなってしまいました。 フォリエッタ、BK(ベノ・クルーガー)、ヴィルシャー、PL(ペーター・ロイトナー)なども良いリードですが、現在私は、ウィーン系のマウスピース(ヘアマン・バーン)に合わせて、シュトイヤーのウィーンタイプであるアドヴァンテージというモデルを使っています。 ※【ご注意】近年(2020)、ドイツのマウスピースとリードを取り巻く環境が大きく変化しています。ヴィオットさんやヴィルシャーさんは急逝され、Zinnerやシュトイヤーも廃業や買収に追い込まれています。Gmも現在、リードはArundosのTosca.br.を使用しています。
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<ヒモとリガチャーについて> Q3-1 なぜリードをヒモで巻くんですか?
A: ドイツ管というと全てリードをヒモ(Schnur:シュヌーア)でマウスピースに固定すると思われがちですが、それはドイツタイプのことで、ウィーンタイプは金属のリガチャーで固定します。ドイツタイプの音の鋭さを緩和し、ウィーンタイプの音のソフトさに芯を出すためにそうなったのでは?と聞いたことがあります。確かにヒモを使うと少し音量は落ちますが、各音域の音にムラが無くなり、フォルテッシモで吹いても音のピークが遠のくような気がします。
また、最低音域が軽くなるなど全体としてリードが0.5近く薄くなるように感じるので、「このリード、音は良いんだけどちょっとキツイなー」というときの救世主でもあります。 しかしながら、何と言ってもリードを替えるのが面倒なのと、マウスピースを握ってB♭管とA管を持ち替える時などリードがずれてしまいがちなので、最近ではドイツの奏者でもBGやGF製のソフトリガチャーを使う人が増えています。それに伴い、かつてはヒモがずり上がらないようにマウスピースの溝の上に付いていた土手?のようなフランジが、リガチャーをはめる時に邪魔になるので、最近は姿を消しつつあります。Gmは、普段の練習ではソフトリガチャーを使用していますが、ここ一番という本番では必ずヒモ(ユザワヤで買った革ひも)を使用します。
Q3-2 ヒモの巻き方は?
A: ヒモは慣れれば誰でも30秒以内で巻けるようになりますが、巻き方は人によって右巻き派、左巻き派に始まり千差万別で、決定版は無いようです。最も異なるのは巻き始めの位置で、リードの横から、上から、裏側からと百家争鳴状態。私はしばらく「リード上から左巻き派」でしたが、過日あるドイツ奏者に「リード裏から右巻き派」に転向させられました。
ヴリツァー純正?のヒモは1m余りで500円もしますが、ヒモなら凧糸でも靴ヒモでも何でも良いし、素材によって音も多少変わる(ような気がする)ので、一度は凝ってみるのも良いでしょう。ですが、SM女王にしろヴェンツェル・フックスにしろ、ヒモの巻き方はズサンというか無頓着というか…弘法は筆を選ばずということなのでしょうか。
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(Last Revised 2011.05.12 by Gm) |