エーラーへの道 by Gm
エーラー式クラリネットへの誘い、または悪魔の囁き集



序にかえて 〜エーラー吹きの憂鬱〜
Gmがクラリネットを吹き始めた頃、身の回りにはベーム式のクラリネットしかなかったし、ベーム式こそが最も進化し完成されたクラリネットだと信じて疑わなかった。だが、より一層クラリネットに興味を抱き、レコードの解説文やアンソニー・ベインズ著「木管楽器とその歴史」などを読み進むにつれ、どうやらドイツやオーストリーではベーム式とは根本的に異なるエーラー式(ドイツ式+エーラー式+ウィーンアカデミー式)というクラリネットを吹いているらしいと知ることになる。
第1章 エーラー適性検定試験(「ホルツの会」非公認)
まず、あなたがエーラー吹きに向いているかどうかのテストです。下記10の設問に正直に答えてください。
YESの数の合計をポイントとします。なお、どちらも好きというような軟弱な答えはポイントになりません。
エーラー検定試験(初級) エーラー検定試験(中級)付き
第2章 フィンガリング
エーラーも吹いてみたいが、指が難しいようだから、と漠然と思い込み敬遠している人は多い。事実は、その通りである。 前章でも触れたようにベームからエーラーに替えた当初、感覚的には3割がたテクニックが落ちたような気がするだろう。 ベームでは児戯にも等しいフレーズがエーラーではエーラーイ苦労することがままある。理由はエーラー特有の指使いにある。 ベームでは全ての指はただ単純に上下に動かせば良いのだが、エーラーでは…
エーラー式基本運指表

エーラーにおいては左手小指を制する者がエーラーを制する小指のヒミツ
将来のエーラー転向に備えてエーラー指のトレーニング
第3章 エーラーの基礎知識
ここまで読み進んで、ちらっとでもエーラー式クラリネットを始めてみようかなと思われたあなた。あなたは選ばれた人です。ここで更にエーラーに関する知識と理解を深め、あなたのほんの出来心を強固な意志にまで高めて頂くために、エーラー初心者が抱きがちな疑問にお答えします。
*楽器について
・そもそもドイツ管とかフランス管て何?
・ドイツ管にも2種類あるそうですが…? エーラー式とウィーン・アカデミー式
・ドイツ・ベームって何のこと?
・初心者向きの安いエーラーはありませんか?
・エーラー式はなくなるの?
*マウスピースとリードについて
・マウスピースとリードはフランス管とどう違うの?ドイツ管の仕掛け
・マウスピースはどこのが良いの? 謎の数学者、ヴィオット
・ドイツ管用リードのメーカーは?ドイツリード大研究
*ヒモとリガチャーについて
・なぜリードをヒモで巻くんですか?
・ヒモの巻き方は?   ヒモの巻き方
 第4章 演奏について
もしあなたがこれまでの“悪魔のささやき”に耐えかねて、本当にエーラー式のクラリネットを吹いてみようと思ったなら、せめて最初だけでもプロ奏者のレッスンを受けることをお勧めします。せっかく高いお金を払ってエーラー式を買っても、ベーム式と同じように吹いていては良い音は出ないし、すぐ技術的困難に直面してイヤになり、宝の持ち腐れにもなりかねません。
・ドイツ管って吹き方に何か違いがあるんですか?
*エーラー演奏の基礎 ヘアマン先生のレッスン
・エーラー独自の演奏法は?
・エーラーを演奏して良かったと思うことは? 
 第5章 エーラーの美学
エーラーは美しい。ベームと並べて見た時、特にそう感じます。均整の取れた全体のフォルム、機能美と優雅さを併せ持つキイの造形は見る者を魅了せずにはおきません。ベームよりもはるかに多くのキイを、操作性の制約から来る限られたスペースの中で互いに干渉せずに配置し、なおかつそれらを精密に連絡しなければならないというエーラーの宿命が生み出す理詰めの美しさ、それは極限まで無駄を殺ぎ落とされた武器が、緊張感の中に一種の優美さを醸し出すのに似ています。エーラーのキイはとても不思議な形をしていますが、どれ1つとして意味の無いものはありません。では、その美しさのほんの一端をご紹介しょう。
*ティア・ドロップ
先ず、ベームに比べ実に大きく立派なcis/gis キイからは涙のような丸い突起が飛び出ています。
*ブロークン・ハート
FとE♭の替え指用のキイがペアで可愛らしいハートの形をしています。
*3本のバナナ
第5線上のFの指使いには、上記の替え指キイを除けばフォークによるものと4番キイを使うものがあります。
  第6章 ドイツクラリネット発達史
クラリネットは、ドイツ南部ニュルンベルクの楽器職人であったヨハン・クリストフ・デナーが、1700年頃シャリュモーというシングルリードの民族楽器に改良を加えて発明したと言われています。バロック・リコーダー製作者としても名高いデナーが考案したクラリネットにはキイが2つしか無く、最低音はミではなくファで、中音のシはシ♭の指で唇を締め上げて出すという実に大らかというかアバウトなものでしたが、その後200年以上にわたってドイツ人が叡智を結集して様々な改良が施し、遂に20世紀初頭にベルリンのオスカール・エーラーが考案、特許を取得した「エーラー・メカニック」によって現在、ベルリンフィルを筆頭にドイツのオーケストラであまねく使用されているエーラー式クラリネットが考案されました。
 第7章 エーラー・レポート (ドイツクラリネットの周辺情報など)